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- 2022.04.22 Friday
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広告業界という仕事柄、雑誌のPR対談などで作家の方々にお世話になることがある。
原稿の依頼と違って、広告主の業種や対談内容、対談料などで広告主の要望通りいかず、交渉に苦労することもある。
一方、快く対談に応じていただける時もある。作家の藤本義一さんがそうであった。
ラブホテルの建設では関西ナンバー1の実績を持つS建設が、社員採用で困っている時、藤本さんとのPR対談を『週刊読売』で希望し、交渉することとなった。
昭和58年頃のことである。当時の読売新聞出版局のK課長が、藤本さんのかかりつけ歯医者と面識があるというので、連絡をとっていただき、大阪市北区の藤本さんの事務所でお目にかかることになった。
当時、藤本さんは50代前半で、昭和49年には上方落語家の半生を描いた『鬼の詩』で直木賞を受賞され、昭和40年からは、日本テレビ・讀賣テレビ共同制作の『11PM』の大阪制作分のキャスターを務めるなど超多忙な有名作家であった。
こちらと言えば、創業間もない広告会社の30代前半の若造である。正直、交渉がうまくいくか不安であった、そこで、お目にかかる前に入手できる限りの藤本さんの著作を読破し、あるエッセイの一節に行き当たった。藤本さんが仕事を引き受ける時の「アイウエオの5原則」である。決め手はこれだとひらめいた。
ア…アイデア
イ…インタレスト
ウ…ウォーク
エ…エキサイト
オ…オーナーシップ
初対面の挨拶もそこそこに、今回の対談が、藤本さんが仕事を引き受けられる「アイウエオの5原則」に合致していることを早口で、やや強引に説明したところ、あの特徴のある八の字眉で苦笑され、「ええよ」とおっしゃっていただいたのである。
以来、事あるごとに仕事の相談にのっていただいたが、決して金銭では動かない人だった。今でも、文章の師は藤本さんであると勝手に決めている。
藤本さんの言葉で強く印象に残っているのは「アイウエオの5原則」と「女の顔は『請求書』、男の顔は『領収書』」である。
今年の10月30日で没後5周年になる。偶然とはいうものの私の誕生日は同じ10月30日である。
写真は昭和59年「週刊読売」に掲載されたPR対談画像(一番左:藤本義一氏)