第26回山本七平賞について

  • 2017.11.27 Monday
  • 13:36

 71年前の昭和21年に「経営の神様」とまで称された松下電器産業(現パナソニック)の創業者である故松下幸之助氏が創立したPHP研究所とは、月刊誌『THE21』、同『VOICE』などと長年にわたり広告出稿の取り引きがあり、1121日、東京・銀座の帝国ホテルで開催されたPHP研究所主催の第26回山本七平賞贈呈式にお招きを受け、出席した。

 山本七平賞は、日本および日本人とは何かを探求し、今なお読書界に強いインパクトを与え続ける「山本学」と称される山本七平の業績を顕彰するとともに新たなる思索家の誕生を期待してPHP研究所が設けたものである。

 今年の奨励賞には昭和61年生まれという31才の若き昭和史研究者である岩井秀一郎氏の『多田駿伝 「日中和平」を模索し続けた陸軍大将の無念』(小学館)が選ばれた。

 選考理由は、主人公の多田駿は日中戦争の発端となった溝橋事件の直後から一年余りのあいだ日本陸軍の中枢である参謀本部次長として実質、最高責任者の地位にあったが、その間、事変の不拡大を唱え、早期の日中和平に奔走したという史実に著者の岩井氏が注目したことである。

 一般には陸軍というと戦争拡大論者と思われているが、当時の近衛文麿首相や広田弘毅外相、さらに平和志向が強かったはずの米内光政ら海軍指導部などの戦争拡大論に押し切られ、多田は無念の涙をのむことになったという。

 選挙委員の中西輝政京都大学名誉教授が述べておられるように「悪玉」であったはずの陸軍の統帥中枢が実は最大の和平勢力であったというのは、歴史の大いなる皮肉というほかはない。

 来年は日中平和条約が締結されて40周年の節目であるのも感慨深く、受賞者の岩井氏が、日本大学文理学部史学科を卒業後、一般企業に勤めながら、研究を続けているというのも意義深い今年の山本七平賞であった。

 

写真は1121日に銀座の帝国ホテルで開催された第26回山本七平賞贈呈式



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